大剣のエーテル
凛とした声が聖堂に響き、ババ様はニィッ!と笑って言葉を続けた。
「さ、せっかく立ち寄ってくれたことじゃし、あんた達も奥に入りな。暖炉で暖まりながら作戦でも立てるのがよかろう。」
彼女の言葉に頷き、私たちは教会の奥に続く扉に向かって歩き出した。
「…!」
その時、最後尾を歩いていたランバートがぴくり、として立ち止まる。
「ランバート?どうしたの?」
そっ、と尋ねると、彼は翡翠の瞳を微かに細めた。
そして、何事もなかったかのように私にいつもの笑みを見せる。
「ううん、何でもないよ。…ちょっと気配に敏感になってるだけ。気のせいかもしれない。」
(…?)
どこかはぐらかすような言葉に違和感を覚えたが、「あぁ、冷えるね。行こっか。」と手を引かれるとそんなわずかな違和感もなくなった。
一度“何でもない”と言ったランバートからは、何も聞き出せないことを知っているから。
(…変に気にするのはやめよう。ランバートは私の隣にいてくれるんだから。)
ロルフの街の宿屋で感じたような言葉に出来ない不安と焦りは、もう二度と感じたくない。
それらが迫ってきているような胸騒ぎも、私は気がつかないフリをしていた。