大剣のエーテル

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ヒュォォッ!


冷たい風が頰を撫でた。

はっ!と気がつくと、目の前には岩肌に囲まれたマンションのような建物。

鉄とコンクリートで出来ているような温かみのない建物に、警戒心が募る。


「…ここは、一派のアジトなの?」


隣に立つ赤いマントの彼に尋ねると、フードの奥から低い声が聞こえる。


「いや。ここはあんたのいた教会から少し離れた森の中だ。この建物は俺が任されている一派の拠点の1つ。エーテルで言えば、支局みたいなもんだ。」


無愛想な説明に、感情はこもっていない。

いまいち掴めない彼を観察しながら、私はフォーゼルに続いて建物へと足を踏み入れた。


(…フォーゼルは、私の命を奪うつもりはないみたい。この際だ。幹部の弱みを握って、一派の情報を何か掴んで帰ろう…!)


頭に浮かぶのは、翡翠色の彼の姿。

ランバートは今、きっとカイさんを追って苦しんでる。

私が、そんな彼の役に立てることがあるとしたら、今隣にいるこの人から情報を奪うことだ。

どきん、どきん、と心臓が脈打つ。

緊張が高まる中、案内されるがまま廊下を進んでいた

その時だった。


『…お?』


突然、廊下を曲がったところから一派の構成員らしき男性たちが現れた。


びくり!


つい、反射的にフォーゼルの後ろへと隠れる。


(そ、そりゃあ一派の人がたくさんいるよね…!ここは敵の拠点なんだもの。)


赤いマントを羽織った男性たちが、驚いたように私たちを見つめた。


『…後ろの、一派じゃねえな…?』


どくん!


男性の1人が口に出した言葉に、体が震える。


(…わ、私がエーテルの仲間だって、バレた…?)


と、ぎゅっ、とフォーゼルのマントを掴んだ

その時だった。

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