大剣のエーテル

フォーゼルは、静かに語り出した。


「16年前。俺の母さんはあんたの魔力に命を救われた。そのお陰で2年後、俺を産めた。」


(そういえば、ダーナが言っていた。16年前、一派を名乗る大怪我をした女の人とそれを連れた男の人が町に来て、私の魔力を奪っていったと。…その女性から産まれたのが、フォーゼル…?)


フォーゼルは、指輪を見つめて話を続けた。


「俺がこの世に産まれて来れたのも、全部あんたのお陰なんだ。…こんなこと言われたって、俺のせいでノアさんが受けて来た苦しみは消えない過去だし、あんたは俺のこと恨んでると思うけど…」


「そんなことないよ。」


「え…?」


はっ、とするフォーゼルに、私は続ける。


「たしかに、魔力を奪われて辛い思いをしてきたけど…。そのお陰でランバート達と会えたから。もう恨んだりはしてないよ。」


「…!」


目を見開くフォーゼルは、私の言葉を予想していなかったようだ。

動揺を隠せない彼に、私は声をかけた。


「私の魔力を返してくれるなら、あなたの親のことも、一派のことも全部許す。」


「!」


すると、フォーゼルはさっきと一変して顔を曇らせた。


(…?)


雰囲気の変わった彼の様子を伺っていると、フォーゼルは苦しげに口を開いた。


「…それは、出来ない。」


「え!」


思いもよらぬ言葉に、私は絶句する。

フォーゼルは、険しい顔をして言葉を続けた。


「俺は、生まれつき魔力が弱い。命を取り留めた代わりに魔力が回復しない母親から産まれたせいでな。…だから、指輪に込められたノアさんの魔力に頼らないと、一派として戦えない。」


(…!)


< 226 / 369 >

この作品をシェア

pagetop