大剣のエーテル

「だから、俺がエーテルと決着をつけ終わるまで、あんたには魔力を返せない。」


どくん…!


見え始めた希望の光が、曇天に隠されて消えていく。

フォーゼルは、私の表情に顔を伏せて呟いた。


「人の魔力を奪っておいて、勝手なことを言っているのは分かってるけど…。俺はこれでも、一派を背負っていかなくちゃいけないんだ。親の代から人生が決められている。…逃れることは、出来ない。」


どうやら、一派は“世襲制”らしい。

厳格な魔法使いの血を繋ぐことで組織を保っているのであろう。

おそらく、一派がフォーゼルの母親を死なせまいとしたのも、幹部の血を途切れさせないためだ。


「私が、すぐに返してって言ったら…どうするの?」


「…!」


私は、彼を見つめて尋ねる。


「エーテルと決着をつける、って…ランバート達と戦うために私の魔力を使うってことでしょう?」


「…あぁ。」


ぐっ、と手のひらに力が入る。


「私は、そんなことのためにあなたに魔力を預けられない。フォーゼルが一派を背負わなくてはいけない苦悩も分かるけど…返して、欲しい。」


しぃん、と部屋が静まり返る。

カチ、コチ、と時計の針が時を刻む音だけが響き、緊張感が高まった。


「…どう…しよ。」


ぼそり、と呟かれた言葉は、彼の口から無意識に出てしまったようだ。

自分で言った後に、はっ!とした彼は、顔を伏せて悶々としている。


(…この人、実はすごく素直な人なのかな。)


強く言いすぎたかとも思ったが、こちらにも譲れないものがある。

彼の返答を待ち、無言で座っていた

その時だった。


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