大剣のエーテル
パァァッ!!
「「!!」」
突然、フォーゼルの指輪が光り輝いた。
私が目を見開くと同時に、淡いオレンジ色が私の体に宿る。
(えっ…っ?!)
と、次の瞬間、ぶわっ!と突風が指輪から放たれた。
とっさに目を閉じると、温かな魔力がわずかに体に流れるのを感じる。
…フッ!
しかし、それは一瞬の出来事で、すぐに何事もなかったかのように静まり返った。
(…な、何だったの…?)
私が、恐る恐る目を開くと、視界に映ったのは急に指輪が反応してびっくりした様子のフォーゼルの素顔だった。
「…本来の魔力の持ち主であるノアさんが近くに来たせいで、指輪からわずかに魔力が移ったみたいだな。」
淡々と状況を口にして指輪を観察するフォーゼルを、私はまばたきしながら見つめる。
私の視線の理由に、彼はまだ気がついていないようだ。
「やっぱり、事がまとまるまであんたと会うべきじゃなかったな。はぁ、俺とした事が。失敗した。」
私は、どこか残念そうにため息をつく彼に、ぽつり、と声が漏れた。
「…可愛い…」
「ん?」
ぱちり、と合った瞳。
私の瞳に映るのは、フードが風で飛ばされ、素顔が丸見えのフォーゼルだった。
ぱっちりとした瑠璃色の瞳に、サラサラの髪。
整った顔立ちは、繊細に作られた人形のよう。
想像していたよりもはるかに幼いその顔は、“最年少”幹部と言われているだけあり、可愛げがある。
言葉や態度から感じていた威圧感も、この素顔から発せられていると思うと、大人ぶっているところが微笑ましく思えるほどだ。
「…………、っ?!!」
数秒見つめ合い、やっとフードが取れていることに気がついたフォーゼルは、ばっ!と頰を手で覆った。
今さら隠しても遅いのだが、彼は素早くフードを被る。
くるり、と、私に背を向けた彼に、私は尋ねる。
「指名手配犯だから顔を隠してるの?そんなことしても、赤いマントなんて目立つものを羽織っている限りムダだと思うけど…」
「…そんなんじゃない。」