大剣のエーテル
ふっ、と、ランバートの力が抜けた。
チャキ…、と背中に背負う剣が音を立てる。
普段の色を取り戻した彼は、弱々しく微笑んだ。
「…ごめん。かっこ悪いとこ見せた。俺、余裕ないみたい。」
「ううん。私こそ、迷惑かけてごめんね。」
見つめ合ったのは数秒間。
だけど、その一瞬の間に彼の心がしがらみから解き放たれたのを感じた。
くるり、と振り返るランバート。
その視線の先には、敵意をむき出しにしたフォーゼルの姿。
「…随分と早いお迎えだな。任務を放り出してまでその人が大事なのか。」
フォーゼルの挑発に、ランバートは目を細めた。
ランバートの凛とした低い声が辺りに響く。
「大事だよ。」
(!)
「ノアちゃんをあんたに簡単に盗られた自分自身を、許せないと思うくらいにね。」
敵を見据える横顔に、どくん、と胸が鳴る。
フォーゼルがその返答にわずかに険しい顔をすると、ランバートはちらり、と森を見ながら続けた。
「…それに、任務を放り出して来たわけじゃない。俺には“頼れる仲間”がいるんでね。」
(…!イヴァンさんたちが代わりに追っているということ…?)