大剣のエーテル

と、次の瞬間だった。


ゴォォッ!!


突然、東の方角から火柱が上がった。

その炎には見覚えがある。


(ロルフの魔法…!ってことは、この近くまで来ているってこと…?)


バキバキバキッ!!


木の幹が何者かによって倒される音が響く。

得体の知れないものが、森を荒らしながらこちらに向かってきているようだ。


ぞくり…!


その場にいる全員が予感を察知し、身構えた

その時だった。


ズササササッ!!


倒れるように森から転げ出てきたのは“1人の青年”。

その服は傷だらけで、袖から見える手は雪のように白い。

淡いグレーの髪が風に吹かれ、乱れた前髪から紫紺の瞳が覗いていた。


「!」


傷だらけの青年が、はっ、とした。

その瞳に映るのは私の隣に立つランバートの姿。


「…ラン、バート…さん…?」


(!)


彼の唇が微かに動いた。

ゆらり、と立ち上がる青年に、その場の空気が張り詰める。


(…まさか、あの人が……?)


私が、ごくり、と喉を鳴らした

その時だった。


…ぽろ。


傷だらけの青年の頰に、一筋の涙がつたった。


(えっ…?)


儚げな雰囲気をまとう彼は想像上のカイさんとは別人だ。

無意識に溢れ出たような涙に、ランバートも目を見開く。


「…ここで、会えるなんて…」


ぽつり、と呟かれた青年の言葉に、ランバートは無言で彼を見つめている。


(…カイさんは、ランバートを恨んでいるんじゃないの…?)


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