大剣のエーテル
…タッタッタッ…
その時、森の奥から聞こえてきたのは数人の足音。
はっ!とすると共に目の前に現れたのはエーテルの団員たちだった。
「!ノア…!無事だったか…!」
ランバートの隣に立つ私を見て、ほっ、として声を上げるイヴァンさん。
カイさんを追いかけて来た彼らは、深手を負っている様子はない。
(よかった…、みんな無事だ…)
するとその時。
イヴァンさんの言葉を聞いたカイさんが、ようやく私の存在に気付いたようにすっ、とこちらを見た。
今までランバートしか見ていなかった紫紺の瞳が私を鋭くとらえる。
「…ランバートさん、誰です?その人は。」
ランバートは、その問いにはっきりと答えた。
「この子はノアちゃん。俺の“大切な人”だ。」
(…!)
“連れ”としか言われてこなかった私を、初めてそう呼んだ彼。
「…“大切な人”…?」
カイさんは、ランバートの言葉を反芻するように呟く。
その形容詞は、彼の感情を逆なでするには十分だったようだ。
「…どういう意味です?まさか、僕が抜けたエーテルの席を埋める新人ですか?」
ランバートは、険しい顔をするカイさんに向かって答える。
「いや、彼女は魔法使いじゃない。ただ、理由なんかなくても俺の隣にいてくれる人だよ。」