大剣のエーテル

なぜか、その言葉だけははっきりと見えた。

耳では聞こえなくても、カイさんがランバートに告げた言葉が手に取るようにわかる。

次の瞬間。

私の鼻をついたのは、嗅ぎ慣れない血の匂い。

そして視界に映ったのは、カイさんの魔力で急激に変形した鎌に貫かれるランバートだった。


ザシュッ!!


(!!!)


飛び散る鮮血。

闇のエネルギーで造られた死神の鎌が、ランバートの外套に強く食い込む。

言葉が出ない。

目が閉じれない。

体が動かない。

倒れゆくランバートの体。

抜かれた鎌に、べっとりとつく赤い色。

全てが鮮明に、残酷に目に焼きつく。


ドッ…!


ランバートが地面に倒れる音が、やけに大きく聞こえた。

辺りは風一つない。

雪が積もっていた銀世界が、ランバートの血で赤く染まっていく。


「…ラン、バート……………?」


やっと出た言葉に、彼の返事はなかった。

放心状態でがくん!と、その場に膝から崩れ落ちる。

するとその時、ランバートを見下ろしていたカイさんが、ふっ、とこちらへ視線を向けた。

その瞳は幻夢石の闇で完全に染まっていて、思考が存在しているかさえも分からない。


「ノアさん!!」


フォーゼルの緊迫した声が聞こえた。

目の前にカイさんの鎌が迫る。

その刃につく血を見た瞬間、私の中の何かが動いた。


「…許さ…ない……!」


鎌を振り上げるカイさんが、私の声にわずかに目を見開く。


「私のランバートを傷付けないで!!」


「!!」


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