大剣のエーテル
と、次の瞬間だった。
パァァッ!!
私の前に、オレンジ色の魔法陣が現れる。
それはフォーゼルの部屋の中で見た、私自身の魔法陣。
しかし、その色はみるみるうちに“翡翠色”へと染まっていく。
(え……っ…?!)
体じゅうに熱い魔力の感覚がしたと思った瞬間。
私の魔法陣から放たれたのは、紛れも無い“ランバートの特殊魔法”だった。
ゴォオォッ!!
一瞬のうちにカイさんの体を包む翡翠の魔力。
パリーンッ!!
闇の魔力を放っていたカイさんの持つ幻夢石の魔法陣が音を立てて砕け散った。
目を見開くカイさん。
エーテルの団員や、フォーゼルも何が起こったのか分からない様子だ。
(今のは、どういうこと…?)
「…っ…!」
カイさんは、ばさり!と外套を翻し、私から距離を取る。
しかし、地面についた足はぐらつき、顔が苦痛に歪んでいた。
遠くからフォーゼルの声が聞こえる。
「カイ!あんたのターゲットはエーテルだろ!ノアさんは関係ない!」
「…っ、そうでしたね。幻夢石に乗っ取られました。…僕としたことが……」
その時、ズキリ、と体が痛んだ。
突然、全身に重い筋肉痛のような痛みが走る。
「ノア、大丈夫か!」
(!!)
イヴァンさんの声に、はっ!とする。
見上げると、そこには真剣な表情の黒いスーツの彼がいて、雪の中に倒れるランバートの側には容態を確認するルタと敵に殺気を放つロルフが見えた。
(…!ランバートが……、動かない…?)
ぐらり、と視界が揺れた。
魔力が体に流れる感覚が頭をガンガン痛めつける。
「っ!ノア?!」
目の前に見えるイヴァンさんの琥珀色の瞳がぼやけていく。
その先に見えるのは、ロルフに抱きかかえられるランバート。
(…ラン、バート……)
その時。
私の意識は、プツリ、と途切れた。