大剣のエーテル


「ランバート…?!何してるの!」


「っ!ノアちゃん?!」


私の視界に飛び込んできたのは、いつもの外套を羽織り、大剣を背中に背負ったランバートの姿だった。

今にでも戦場に出て行きそうな彼に私は駆け寄る。


「意識が戻ってないって聞いてたのに…、だめだよ、まだ寝てなくちゃ…!」


ランバートは、“見つかったかー”と言わんばかりの顔で、いつものように、ふにゃりと笑う。


「大丈夫だよ。俺はそんなヤワじゃないし。傷を負って一派と戦うなんて珍しいことじゃ…」


「だめ!!」


「!」


私の勢いに、ランバートは目を見開いた。

面喰らったような彼に、私は畳み掛ける。


「傷、浅くはないんでしょう?本当は無理してるんじゃない?ランバートは、いつも笑って隠そうとするから!」


「無理なんかしてないって。あはは、ノアちゃんってば心配性なんだから…」


(…嘘つき…)


にこやかに笑う彼を、ぎゅっ!と抱きしめる。


「…!」


わずかに強張った彼の体。

ほのかに伝わってくる体温は、彼が生きていることを私に実感させる。


(心配性なんかじゃない。ランバートが倒れた時、本当に、怖くて怖くて仕方がなかった。)


この人は、常に死と隣り合わせで生きているんだって

エーテルの団長っていうのはそういう仕事なんだって、嫌でも見せつけられた。


(この人を行かせちゃだめだ。今度こそ本当に、会えなくなるかもしれない。)


カイさんと対峙した時のランバートは、ひどく不安定に見えた。


“俺には、ランバートはカイを追っているんじゃなくて、“自分の死に場所”を探しているようにしか見えねぇ。”


かつてのロルフの言葉が蘇る。


(本当に、ランバートが死んでしまったら…)

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