大剣のエーテル
にこにことガッツポーズを見せるハロルドさん。
場の雰囲気が少し柔らかくなったところで、ランバートが団員たちを見つめて言った。
「離島への移動はハロルドのパトカーに乗っていく。そこからの動きは昨日話した通りだよ。まぁ、きっと思うようにはいかないだろうから、何かあった時は各自臨機応変にね。」
“不祥事へのとっさの対応は慣れている”といった様子で頷いた保護者組は、それぞれいつもの黒いスーツと白衣の襟を正した。
ルタが真剣な顔でランバートに声をかける。
「あんたは好き勝手剣を振りすぎないようにね。本調子じゃないんだし。…この先、変な大怪我でもしたら治療費2倍で取るから。」
「うーん。2倍はお財布に響くなあ。」
ルタの苦言の裏の気遣いを察したランバートは、素直じゃないルタの態度に乗るようにわざと困ったように微笑んだ。
私は、大剣を背負う彼に近寄りそっ、と声をかける。
「ランバート、あの……」
“無茶はしないで”、は昨日伝えたし、“行かないで”、とは今さら言えない。
最後に伝えたいことはたくさんあるはずだが、思うように言葉が出てこなかった。
すると、私を見かねたランバートが、ふいに私に目線を合わせた。
目の前に来た整った顔に目を見開くと、彼はにこりと笑って私に告げる。
「ノアちゃん。俺が帰ってきたら、覚悟しておいてね。」
「え?」
「昨日の“跡”、服で隠れないんだけど。」