大剣のエーテル
(っ!!)
彼の首から見える包帯は、てっきり胸に受けた傷を補強して巻かれているものだとばかり思っていた。
(まさか、キスマークを隠すために…)
軽く口角を上げる彼の表情が、なんとなく黒に染まって見える。
びくり、とわずかに震えた私を見て、ランバートはくすくす笑った。
「そんな顔しないでよ。ちょっといじわるするくらいで許してあげるからさ。」
「い、“いじわる”って?」
「さぁ?」
(もしかして、もう始まってる?)
ドキドキして身構えていると、ランバートはふっ、と真剣な表情で、私の髪を愛おしそうに撫でた。
「…行ってくるね。」
(…!)
彼の指が、ふわりと私の頰に触れる。
離れていく温もりが、急に寂しい。
…パタン。
閉じる教会の扉。
残されたのは、私1人。
「───やはり、あの団長は行ったのかい。」
カタカタカタ、と車椅子が近づいてくる。
ババ様の問いに、私は呟いた。
「はい。…でも、きっと帰ってきます。エーテルのみんなと一緒に。」
ババ様は、優しく私の背中を撫でて頷いた。
こうして、エーテルと一派の全面戦争が始まったのです。