大剣のエーテル
(この“能天気ヤロー”は…!ほんとに緊張感のない奴だな。)
へらへらと気の抜けた様子の団長を睨み飛ばすと、ランバートは前方を見つめて静かに言葉を続けた。
「大丈夫だって。カイのことは、俺が責任とるからさ。」
「「…!」」
俺がぴくりと反応するとともに、ガラス越しに見えるルタの顔つきも変わる。
飄々としているように見えて、ランバートの頭は高速に働いているのだろう。
本当に、こいつは掴めない奴だ。
昨夜、今回の“作戦”を聞いた時も改めて実感した。
(この男は、底が知れない。)
「うぅ…、もうすぐ着くっスよ…」
すでに瀕死状態になっているハロルドが、うめき声をあげた。
ブォン、とエンジン音が響くとともに、荒れ地のような島へとタイヤが着地する。
ガチャ、とパトカーのドアを開けて島に降り立つと、ぞわり、と体が震えた。
(…“悪の気”は、思っていたよりも厄介だな。妙に視界が霧がかって見えやがる。)
助手席から降りたルタは、運転席でハンドルに抱きついているハロルドに向かって声をかけた。
「あんたはここで待機してて。悪いけど、俺たちの任務が終わるまで待っててもらうから。」
「り、了解っス…なる早で頼むっス…」
シートを倒し、ぐでん、と仰向けに寝転んだハロルドは、エーテルと繋がる通信機を手にしたまま目を閉じた。
苦笑したランバートは、ふっ、と翡翠の瞳に光を宿し、島の中心部を見据える。
「…あの“洋館”が、一派のアジトってわけか。」
団長の言葉通り、霧の向こうに悪趣味な建物がそびえていた。
「行こう。」
短く指示が飛び、俺とルタはランバートに続いて歩き出した。