大剣のエーテル

すると、フォーゼルはふとランバートへと視線を向けて口を開いた。


「まさか、あんたが前線に出てくるとはね。昨日、死んだかと思ったのに。」


ランバートは、黙ったままフォーゼルを見つめている。

フォーゼルは、目を細めて言葉を続けた。


「かつての後輩に揺さぶられて刺されてるようじゃ、団長としてのあんたは噂より弱いみたいだな。」


と、フォーゼルが口にした瞬間。

彼の隣に立つカイが、ふっ、と表情を一変させて低く言った。


「ランバートさんを悪く言うな…!」


「……あんた、どっちの味方なんだよ。」


いつもの敬語が抜けて、つい本心がぽろりと出てしまったようなカイをフォーゼルが怪訝そうに責めた。

辺りがしぃん、とする中、感情を隠したようなカイの声が小さく響く。


「“味方”、という概念は僕にはないですよ。“今の僕ではエーテルに戻れない”。…ただ、それだけです。」


ランバートは、相変わらず無言のままカイを見つめていた。

きっと、ランバートはカイをエーテルに戻す気は無い。

幻夢石に手を出したカイを追放したのは他でも無いランバート自身だからだ。


(…だが………)


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