大剣のエーテル
「ど、どうして僕が、エーテルの皆さんを離島に閉じ込めて始末しようとしていることにも気が付いたんです?フォーゼルはその面には一言も触れていないのに…」
すると、カイの問いにランバートは小さく微笑んでさらり、と答えた。
「“俺がカイならこうするな”って、思ったから。」
「!!」
ランバートは、見抜いていた。
自分に憧れていたカイが取るであろう行動パターン。
それは、“ランバートさんならこうする”という、思考回路の元、カイが動くということ。
人はまず、突飛な策を取る前に基本の型を選択するものだ。
先生から教えられた方法や師匠から盗んだ技を元に、新たなパターンを見いだす。
その“先生”が、カイにとって“ランバート”であるということを察せない団長ではない。
実際、カイも自分で口に出していた。
“僕はずっと、ランバートさんの“先の読めない奇策”を見てきたんです。…敵を騙し、うまく動かして、自分の裁けるテリトリーに追い込む…”
きっとその言葉を聞いた瞬間、ランバートは勝利を確信したんだろう。
(全て“よんでいた”ってわけか。)
戦場にすらりと立つランバートが、敵の数手先まで思考が回る聡明な青年だと誰が思うだろうか。
普段彼の側にいる俺からしても、ただの“ノア好きの犬”にしか見えない。
(…ほんと、“食えない男”。)
「カイ。」
その時。
フォーゼルが、愕然としているカイの名を呼んだ。
振り向いたカイに、フォーゼルはぽつり、と呟く。
「エーテルを操っていたのは、俺たちじゃない。」
「…!」
「手の上で踊らされていたのは……俺たちだ。」