大剣のエーテル
…がくんっ!
カイが、力が抜けたように崩れ落ちた。
カタカタと小刻みに震える彼は、何を思っているのだろうか。
自分の策が失敗したことに失望して震えているのか。
…もしくは、目の前の団長の恐ろしさを改めて感じ、実力の差に戦慄しているのか。
「カイ。」
ランバートが、彼の名を呼ぶ。
ふっ、と顔を上げた青年に、ランバートは告げる。
「お前は、成長なんかしていない。」
「!」
「自分で幻夢石を手放す強さを得ない限り、俺はお前からエーテルの背中を追う権利をも奪う。」
ザァァッ…!!
冷たい風が強く吹き抜けた。
辺りは、しぃん、と静まりかえる。
(あの、“天性のお人好し”が、こんな突き放した言い方をするなんて…)
イヴァンも、驚いたようにランバートを見つめていた。
しかし、ランバートの瞳には優しげな翡翠の色が宿ったままだった。
そのことに気がついた俺たちは、団長の姿を見守り続ける。
「カイ。」
再び呼んだ名前に、カイが、すがるようにランバートを見上げた。
数秒の沈黙の後。
ランバートは、優しさと強さを含んだ声でカイに告げる。
「カイがちゃんと過去を断ち切ったら、俺はお前に刃は向けない。」
「…!」
「お前がここで幻夢石を捨てたら、一緒に城へ連れ帰る。」