大剣のエーテル

(…!王からの始末命令に背くのか…?!)


ランバートに課せられた特別任務は、カイの命を奪うことだ。

城に連れ帰る“捕縛任務”ではない。


(…やっぱり、ウチの団長は優しすぎる。)


カイは、ごくり、と喉を鳴らした。

俺とイヴァンは、その光景をじっ、と見守る。

かつて隣に並んでいた2人が、2年のすれ違いを経て、再びお互いの道を交差させようとしている。

カイの手にしていた幻夢石が、カツン…、と地面に落ちた。

カイの紫紺の瞳は、真っ直ぐにランバートを見つめている。


「…いい子だね。…おいで。」


ランバートが、すっ、とカイに手を差し伸べる。

2人の指が触れ合いそうになった

その直前だった。


…ボゥッ!!


「「!!」」


突然、地面に落ちたカイの幻夢石が闇の閃光を放った。

まばたきの一瞬で体が幻夢石の光に包まれるカイ。


(?!)


その場にいた誰もが目を疑った瞬間。

幻夢石に呑まれたカイが顔を歪ませた。


「…っく……、…かは……っ」


紫紺の瞳が、みるみるうちに暗く染まっていく。


“……ラン、バート…さん…”


光が消える刹那、カイの唇がわずかに動いた。

と、その時。

ブワッ!!と闇の波動が辺りに広がった。

カイを取り込んだ幻夢石がドクン!と脈打ち、呼吸をする間も無くカイを取り囲む闇の霧が濃くなっていく。


(!呑まれる…!!)

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