大剣のエーテル
私は、彼のセリフに言葉が詰まった。
なんとなく聞いた様子のランバートに向かって、静かに答える。
「ごめんなさい。私、本屋さんに行ったことがないの。」
「え?」
ランバートが目を見開いた。
わずかに変わった空気に気まずさを覚えながらも、なんとか取り繕うようにして続ける。
「私の家にはたくさん本があって、いつもはそれを読んでいるの。新しい本を買うお金はないし…町も、あまり歩いたことはないわ。家が好きなの。」
最後の言葉で誤魔化しきれただろうか。
ランバートは表情を変えずに私を見つめていたが、やがて静かに「そっか。」と呟いた。
沈黙が続き、風が草原を撫でる音だけが聞こえる。
ざわざわとした草花の声が耳に届いた時、ランバートが口を開いた。
「旅に出たことはある?世界には、本だけじゃ分からない色々なものがあるんだよ。」
「…うーん…、ない…わ。」
「今まで、一度も?」
「生まれてから、今日でちょうど16年になるけど…、一度もないわ。」
我ながら、特に語ることもない人生を送ってきたのだな、と悲しくなる。
せっかく人と喋るチャンスなのに、会話の終着点はいつもネガティブな私のセリフになってしまって申し訳ない。