大剣のエーテル

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《ランバートside》


ゴォオォッ!!


幻夢石から、闇の魔力が放たれる。

呼吸をするたびに、心を壊す“ナニカ”が体の奥底に入り込んで来る気がした。

靄の中心に見える幻夢石はカイの負の感情を吸収し、闇のエネルギーを溜め込んでいたようだ。

俺が魔法陣を広げて攻撃しようとするたびに、悪の気を放って妨害してくる。


「…くっ…!」


傷口が、ズキリ、と痛んだ。

足を踏み出すたびに全身に痛みが広がる。


(…まずいな、体力が持たない…!)


タイミングが図れず、幻夢石の攻撃を避けることで精一杯だ。


ドドドトドッ!!


幻夢石から、闇の魔力を宿した刃が飛んでくる。

咄嗟に地面を蹴って軌道から外れるように動くが、刃は狙いを定めたように俺を追って進路を変えた。


「GPSでも付いてんのかよ…!」


即座に大剣を拾いあげ、飛んでくる刃を跳ね返していく。


ガキン!ガキン!!


一つ一つの攻撃が重く、体がよろめく。

と、次の瞬間。

背後に幻夢石の霧が噴射された。


(な…っ!)


視界が真っ暗になる。

どくん!と、全身が脈打った。

頭の中に、自分の思考とは別の“ナニカ”が無理やり入ってくる。


「か、は…っ…!」


まるで、全身を割かれるような感覚が走った。

ぶわっ!と、過去の記憶が頭の中に流れ込む。

蓋をしていた悲しい記憶、苦しい記憶が心を締め付けた。

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