大剣のエーテル

(…!今さら、なんでこの記憶が…?)


そのような古い傷さえもえぐられる。

幼少から積み重なった負の感情が、堰を切ったように押し寄せた。

暗闇にぽつん、と立つのは、幼き日の自分。


“コイツ、魔法を使えないのか…!ケンカもできないなんて、弱い奴だな…!”


“おい、やめろ!そいつは“普通じゃない”!怒らせたら、二度と魔法使いに戻れなくなるぞ…!”


俺が相手の魔法陣を砕くことが出来ると知った時。

相対した奴らはみんな同じ目で俺を見た。


“聞いたか?あいつ、魔法の実技ナシで進級試験に合格だってよ。生まれつき恵まれてる奴は違うよなあ”


“実技がないのは当然だろ。監督官だって、自分の魔法陣を砕かれちゃあ、たまったもんじゃないからな”


生まれつき恵まれている、なんてことを思ったことは一度もない。

“普通”ってなんだ?

俺は、みんなと違うのか?

どうして俺から離れて行くんだ?

俺はどんなことがあっても友達に魔法なんかかけないよ。

生まれたことを祝ってくれなくてもいいよ。

ケンカしたいなら殴ってもいいよ。

どんな冷たい言葉でも受け止めるよ。

悲しいときも、苦しいときも、全部笑ってみせるから。

だから、お願い。


“1人にしないで”


(……っ…)


呼吸が苦しい。

喉が熱い。

幼き日の自分は、泣いていた。

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