大剣のエーテル
(カイは、幻夢石を手にしたその瞬間から、この苦しみの中にずっといたのか…?)
紫紺の瞳の青年が脳裏をよぎる。
その時。
暗闇に浮かぶ2人目の自分が、ふっ、と大きく成長した。
その背にあるのは、大きな剣。
13歳でエーテルとして選抜されてからの記憶が、走馬灯のように流れ出す。
“今日から、魔法を使ってもいいの…?”
“あぁ。何をためらう必要がある?君は魔法使いなんだ。”
それが、1番初めに王と交わした会話だった。
俺の魔法は、必ず人の人生を狂わせる。
そう知っていながらも、まだ幼かった俺にとって、王の言葉は素直に嬉しかった。
戦場に立ち、初めて俺に“敵”が出来た。
いつも腫れ物のように扱われていた俺にとって、それでさえ嬉しく感じたのを覚えている。
その頃、俺は歪んでいたのかもしれない。
魔力を好きに放出する感覚に興奮した。
しかし、それと同時に罪を背負う苦しみを知った。
今まで魔法を使ってこなかったのは、俺自身を守るためでもあったんだと気づく。
“何をためらう必要がある?”
王の言葉が、ズシリと重くのしかかった。
エーテルとして選ばれた以上、任務は遂行しなければならない。
魔法を使う場も与えられた。
────だけど。