大剣のエーテル

…そんな時。

魔法を使うことでしか存在意義を見出せなくなってしまった俺をすくい上げたのは、他でもない仲間だった。

“魔法を使いたくないなら使わなければいいだろ?お前には背中の大剣があるんだから。”


“…!”


若りしイヴァンが、さらりとそう口にした時のことを今でも思い出せる。

初めて、誕生日を祝わってくれたのも仲間だった。


───そして。

あの大きな木の下で出会った。


“…その気持ち、分かるわ。私も、みんなと違うから。”


“私は、魔力を持たない“悪魔の子”なの。望まれずにこの世界に生まれた、ただの人間。”


まるで必然であったかのように。

彼女は、俺が救うべき人だと思った。


“…私の前では、笑わなくていいよ。”


“え…?”


“ランバートは、今悲しいでしょう…?”


“そういう時は、無理しなくていいんだよ…?”


ルタの診療所での会話が蘇る。

俺の傷に、そっと手を当ててくれた。

心を殺して笑うことに慣れた自分を、見抜いてくれた。

彼女と出会う前。

俺がやるべきことは、“一派の殲滅”。

剣を振るい、奴らの魔法陣を砕くことだけだった。


“ランバート…!”


微かに、置いてけぼりにした彼女の声が聞こえた。

俺を呼ぶその声に、はっ、と気づく。


(そうだ…、俺はあの子を魔法使いに戻してあげなきゃいけない。)


そのために、彼女をあの町から連れ出したんだから。


(俺は見届けなくちゃいけない。彼女の人生に責任を取らなくちゃいけない。)


目を開いているのか、閉じているのか分からないほどの闇が見える。

そこからはもう、かつての自分は消えていた。

目の前に光など一つもないが、記憶の中の彼女の姿だけは曇らなかった。


“ランバート。私は、貴方のことが…”


その続きは聞けないと、はぐらかして突き放した。

きっとその先は、俺の中に見えた答えと同じだったはずなのに。


「…ノ、ア…ちゃん………」


薄れゆく意識の中。

そう、彼女の名前を呼んだ

次の瞬間だった。

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