大剣のエーテル
…さて、フィリターニアについて、少しはお分りいただけただろうか。
長くなってしまったが、つまりここは魔法使いの、魔法使いによる、魔法使いのための国なのである。
例によって今まで、長い長い歴史の中で、誰1人として、この国に、ただの人間が生まれたことなどなかった。
そう。
今までは。
“ノア。君は魔力を持っていないのかい?”
誰かが言った一言が、始まりだった。
この国の歴史の流れをオルゴールとして例えるなら、居場所を間違えた突起であり
ピアノと例えるなら一つだけ調律の狂った鍵盤であり
レコードと例えるなら、曲の流れを飛ばしてしまう傷であり……
つまり、私はそういう存在らしい。
“ノア。お前の存在が外に知られては、この国の歴史が根底から覆る。
…決して、この町から出てはいけないよ?”
そう言われた時から、16歳になる日まで、私の世界は丘に登ればすべてが見渡せるほどの狭さだった。
国の西端にある町が私のすべてであり、そこから出ようというつもりもなかった。
彼らが、私の前に現れるまでは。
「「「ノア。」」」
イヴァンさん、ルタ、ロルフ。
私を迎え入れてくれた大切な仲間たち。
そして、私の大好きな人。
「ノアちゃん。」
ランバートが、ふわりと私に笑いかけた。
一度も会うことが叶わなかった両親がくれた、最初で最後のプレゼント。
私の名前を呼んでくれる人ができた。
町を出て、たくさんの出会いがあった。
お父さん、お母さん。
私は今、幸せです。
エピローグ*終