大剣のエーテル
プレゼントは目を閉じて
「ノア、集合。」
ルタから声をかけられたのは、クリスマスを2日後に控えたある昼下がりだった。
「なぁに、ルタ?」
いつもの白衣に身を包んだ彼は、綺麗な碧色の瞳を微かに細めて口を開く。
「あのさ、今年のクリスマスは何か予定あるの?」
「えっ?」
タイムリーな話題に、どきり、とする。
私はにこにこと笑ってルタに答えた。
「今年は、ずーっとこの宿舎にこもって本を読みふけるの!ランバートに教えてもらった国立図書館からたくさん借りてきたんだ。」
自慢げに貸し出しカードを見せるが、ルタは眉を寄せる。
「ノア…。あんたが本の虫なのは知ってるけど、クリスマスだよ?それでいいの?」
「?」
きょとん、としてまばたきをしていると、ルタは「はぁ。」とため息をついて爆弾発言をした。
「ランバートとの予定はないわけ?付き合ってんでしょ、あんたら。」
「!!!!」
(ばっ、バレてた…!!)
一派のアジト崩壊後。
豪華客船の祝賀パーティーに参加した夜から、私は晴れてランバートと恋人同士になれた。
もちろん、みんなに大々的に報告したわけでもないし、接し方を変えたわけでもない。
明らかに挙動不審になっていると、ルタはそんな私の心中を察したようにため息混じりに言った。
「そりゃ、見てればわかるよ。言っとくけど、イヴァンもロルフもみんな気づいてるからね。あんたら2人ほんと分かりやすいから。ランバートとか、特にひどいし。」
「そ、そうなの?」
「うん。いつも“ノアちゃんノアちゃん”言ってるし、迷惑なくらい幸せオーラ全開だからね。いつか仕事に支障がでそう。」
(…っ!ランバートってば、恥ずかしいなぁ。…ちょっと嬉しいけど…)