大剣のエーテル

ルタは、私の問いに少し驚いたようにぴくり、とした。

しかし、数秒後。

彼は何かをはぐらかすように私から視線を逸らして呟く。


「その点なら問題ないよ。ノアは券の入手ルートなんて気にせず、ランバートを誘って楽しんでくればいいの。」


(…!)


ルタの思いがけない優しさに胸を打たれる。


「ランバートは仕事っていっても夜には終わるでしょ。ディナーくらい付き合えるんじゃない?」


(た、たしかにそうかも…。)


彼の言い分に納得してぐるぐる思考を巡らせていると、彼はばさり、と白衣を翻しながら去り際に言葉を続けた。


「初めてのデートなんだし、ちゃんとオシャレして行きなよ?…あ、でも口紅には気をつけなね。」


「?口紅?」


くるり、と振り向いた彼は、さらりと続ける。


「祝賀パーティーの時みたいに口紅よれてたら、キスしたの簡単にバレるでしょ。ウチの団員たちはそういうのは目ざといし。」


「っ?!」


「照れるならちゃんとランバートに色が移った唇拭かせなよ。不良コンビにからかわれるだろうからね。」


(さ、さっきノロケた仕返しされた…っ!)


コツコツと歩いていくルタの背中を動揺を隠しきれず見つめる。


「ルタ!ありがとう…!」


“はいはい分かった”と、ひらひらと手を振る彼を見送り、私はきゅっ!とクリスマスディナー券を胸に抱いた。

フライングの、最高級のクリスマスプレゼントだ。


(…すごいよ、ルタサンタ…!急いでランバートに会わなくちゃ…!)


私は、わくわくが抑えきれずに城の廊下を駆け出した。

クリスマスが一気に楽しみになる。


(本を読むのも楽しみだったけど、ランバートに夜だけでも会えるとなると、全然嬉しさが違う。)


タッタッタッ…!


気持ちが焦るあまり、だんだんと走るスピードが速くなる。


(ランバート、どこにいるかな?もしかして資料室…?今は仕事中だと思うけど…早く会いたい…!)


と、勢いよく廊下の角を曲がった

その時だった。


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