大剣のエーテル
「今は、仕事中じゃなかったの?」
「んー、そうなんだけどね。早くノアちゃんに伝えたくなって、イヴァンがトイレ行ってる間に抜け出して来ちゃった。」
(本当に、この団長は…!イヴァンさん、きっと今ごろいなくなったランバートを探してるよ。)
だけど、私のために息を切らして走って来てくれたランバートを注意する気にはなれない。
私だって、彼に伝えたいことがあってここに来たのだから。
「ねぇ、ランバート!…これ、一緒に行かない?」
「?“クリスマスディナー”?」
私が差し出した券を、ぱちぱちとまばたきをしながら見つめるランバート。
私は、嬉しさを堪えきれずに満面の笑みで彼を誘った。
「ルタがさっきくれたの!“ランバートと一緒に行って来なよ”、って。」
「へーぇ!ロルフならともかく、ルタがこういうのを持ってるのは意外だな。」
ランバートは「あとでルタにお礼言っとかなくちゃね」と嬉しそうに笑って私に答えた。
「せっかくだし、ありがたく使わせてもらおっか。楽しみだね、ノアちゃん。」
「うん!」
にこにこと笑みを交わす私たち。
こんなにクリスマスが待ち遠しくなるなんて、思ってもみなかった。
旅が終わってからというもの、ランバートと長く一緒にいる時間なんてなかった。
ましてや、1日中2人っきりなど、心臓が持つかどうかもわからない。
(ランバートと、ずっと一緒にいられる…。嬉しいな…!)
「ランバートー!ランバートーっ!」
「「!!」」
遠くの方から、飼い犬を探すようにランバートを呼ぶイヴァンさんの声がする。
城中に響き渡るその声に「わー、まずい。」と苦笑したランバートは、券を大事そうに胸元にしまって私に言った。
「じゃあ、当日は11時に城下町の噴水のとこで待ち合わせよっか。」
「うん!わかった…!」
…私とランバートのクリスマスデートまでの2日間。
夢のようなひと時が始まるまで、私はそわそわして落ち着かない日々を過ごしたのだった。