大剣のエーテル
翡翠の瞳が私を映した瞬間。
ふわり、と彼にプレゼントを渡す。
「これ、“マフラー”…?」
目を輝かせて首に巻かれたプレゼントを見つめるランバート。
こくり、と頷いて様子を伺っていると、彼は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「…あったかいね。ありがとう…!これ、ノアちゃんが編んだの?」
「!えっと…買った。…ごめんね、編むには時間がなくて。」
「あはは!ごめんごめん。嬉しいよ。」
愛おしそうにマフラーを抱きしめるランバート。
優しげに細められた翡翠の瞳に胸が鳴った時、彼が、にやり、と笑って呟いた。
「…ちゅーじゃないのか。」
「っ!」
ちらり、と私を見る彼は、ほのかに色香を宿した瞳で視線を送る。
(…反撃された…っ!)
意地悪な笑みを浮かべる彼に、私は少し照れつつ覚悟を決めた。
(さっきのランバートみたいに、一瞬だけキスすればいいんだよねっ!)
私は、ふっ!と目をつぶり、勢いのまま彼の唇へ距離を縮める。
しかし、私に“唇を掠め取る”なんてスキルはなかったようだ。
スピードと位置の調節が出来ず、私とランバートのおでこがぶつかる。
ゴンっ!
「「痛ッ!」」
激痛でお互い目を開ける。
視線が交わった瞬間、笑いが込み上げた。
「あはは!ノアちゃん、目ぇ閉じるの早いでしょ!俺のことちゃんと見てた?」
「見れない見れない!恥ずかしいもん!」
くすくすと笑い合う声が2人っきりの部屋に響く。
こんな幸せなひと時、今まで過ごしたことない。
と、その時。
ランバートが、ふっ、と瞳の色を変えた。
「…もう、しょーがないなあ。」
彼が流れるように私の頰に手を添えた。
私にしか見せない、キスの前の熱を宿した瞳。
唇が触れる前の彼の表情は、どんな時よりも大人っぽくて、視線が逸らせない。
「…ん…」
静かに重なった2人の影。
そっ、と離れていく唇の余韻に浸っていると、ランバートは年上の彼の顔をして囁いた。
「…こうするんだよ。…覚えた?」