大剣のエーテル

その瞬間、ランバートがわずかに肩を震わせた。

目を見開いたまま硬直している。


(…さすがに言いすぎたかな。せっかく力になろうとしてくれたのに…)


無言になってしまったランバートを、私はおずおずと見つめた。

すると、彼は真剣な瞳で私を見下ろす。


(え…)


どきり、とした時、ランバートが静かに口を開いた。


「ノアちゃん、エーテルの団長を見たの?」


「…!…う、うん。すごく大きくて強そうな男の人で、大剣を軽々と持ち上げてたわ。ちょうど、この町にいるみたいで…」


急に問われ、私はぎこちなく答える。


(…どうしてそんなことを聞くんだろう)


すると、ランバートは「へぇ…」と小さく呟いた。

そして私から目を逸らし、遠くを見つめるような視線を空に向ける。

何かを考えているような彼の様子を伺っていると、ランバートは「…ノアちゃん。」と小さく私の名を呼んだ。

そして数秒後、彼は真剣な声色で予想外の言葉を紡いだのだ。


「もし、俺がエーテルの団長だったら……
一緒について来てって頼む?」


「え…?」


そんなことあるはずがないのに、ランバートは表情を変えずにさらりとそう言った。

また冗談を言っているのだろうか。

この人は穏やかでにこにこしているようで、イマイチ本心が見えない。


「そりゃあ…そうね。…エーテルの団長より心強いものはないもの。」


< 35 / 369 >

この作品をシェア

pagetop