大剣のエーテル
突然の爆弾発言に、つい声を上げるルタ。
すっ、と目を細めたルタが口を開く。
「いきなり何?なんで俺が“カラオケ大会”なんかに出なくちゃいけないの。」
「お前も聞いただろ?この優勝特典。シャトー・クレは予約を取るのも難しい人気店だが、この大会で優勝するだけで“クリスマスディナー券”が手に入るんだぞ。」
「“優勝するだけ”、なんて簡単に言ってくれるね。そんな雑な任務受けたことないよ。」
その時、2人のやりとりを聞いていたロルフが、はっ!として口を開いた。
「あー、なるほど。オッサンのプランでは、このクリスマスディナー券をランバートとノアにあげようってことだな?」
「そういうことだ。」
“オッサン呼ばわり”もさらりと流し、イヴァンはロルフに続けた。
「このカラオケ大会の参加者は、このクリスマスディナー券を狙ってくる奴ばかりだ。おおかた、“彼女に頼まれた〜”とか“この券を口実に憧れの先輩と〜”とかだろ。」
「…ふざけた大会…。」
ぼそり、と呟くルタに、イヴァンが続ける。
「ルタも、ノアに楽しいクリスマスの思い出を作らせてやりたいと思うだろ?」
「…!…まぁ、それはそうだけど…」
追い討ちをかけてくるイヴァンに、ルタは渋っている核心を尋ねた。
「なんで“俺”なの?そっちの女好きの方が目立つし慣れてそうじゃん。」
飛び火してきたロルフは「おー。別に出てもいいぜ?」と案外乗り気だ。
しかし、イヴァンはじっ、とルタを見つめて答える。
「お前、オルガン弾けるだろ?…ってことは音感いいだろ?…ってことは歌上手いだろ。」
「何その強引な理論。人前で歌うとか勘弁なんだけど。」