大剣のエーテル

ルタの態度に、はぁ、とため息をついたイヴァン。

すると、黒いスーツの彼は「…仕方ねぇ。」と呟き、再びスーツの胸元から薄めのアルバムを取り出した。


「…何なの、そのスーツ。四次元ポケットなの?」と小声で突っ込むルタに、イヴァンはアルバムを掲げた。

その表紙を見た瞬間、ルタの表情が凍りつく。


“マイエンジェル・ルタ〜成長の記録〜”


「…何その震えるタイトル。筆跡に見覚えあるんだけど…」


入手ルートは1つしかない。

恐らく、ババ様に気に入られているイヴァンがその点を悪用して“この時”のために取り寄せたんだろう。

そのことをとっさに察するルタ。

オーラが一変したルタに、ドス黒い笑みを浮かべたイヴァンが答える。


「これはババ様から譲り受けたお前の成長アルバムだ。教会にきた頃の幼少期の寝顔から、初めて女の子とデートした時の様子などのババ様隠し撮りの写真の数々が…」


「な、何それ?!ちょっと、見せて!!」


「だーめ。誰が渡すかよ。」


ひょい、とアルバムを高くあげるイヴァン。

物理的に届かない場所へと掲げられたアルバムが、悪魔の書に見える。


「…国が発行しているエーテル情報誌の“おまけスナップ”にコレを載せれば、お前のファンはさぞかし喜ぶだろうな。」


「!!」


イヴァンが、琥珀色の瞳にギラリと光を宿してトドメを刺した。


「ルタ。お前、このカラオケ大会で優勝してこい。」


「……く、そ……!」


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