大剣のエーテル
ぐしゃ…!とカラオケ大会の紙がルタの手の中で握りつぶされる。
「分かった!出りゃあいいんだろ!そんなアルバムで脅されなくても優勝なんて余裕だっ!」
ツカツカと応接室から出て行く白衣の彼。
開き直ってバタン!と扉を閉めたルタの後ろ姿を、ニヤリと見つめるイヴァンは確信犯だ。
「いやー、実に素直だ。ルタはああ見えて負けず嫌いだからな。きっと優勝の件は問題ないだろ。」
「…相変わらず腹黒いオッサン。」
くっくっく、と笑うイヴァンに、ロルフが眉を寄せて呟いた。
そして、はぁ、と呼吸をしたロルフは黒いスーツの彼に尋ねる。
「んじゃ、もうやることはねぇな。俺はルタのカラオケ大会を客席からビデオで撮影して、後で散々からかってやればいいのか?」
「いや、お前にもあるぞ。“重要任務”が。」
きょとん、とするロルフに、イヴァンはドサ!と鞄から資料の束を取り出した。
テーブルに積み上がった細かい文字が並ぶ紙をロルフが怪訝そうに見つめる。
その時、イヴァンがロルフに向かって口を開いた。
「お前には、俺がクリスマスまでにやる予定だった仕事を代わりにこなしてもらう。」
「はぁ?!」
「当然だろ。俺がランバートの仕事を肩代わりすれば、俺の仕事をやる奴が居なくなる。」