大剣のエーテル

一気にテンションが下がったロルフ。

ハンコを押す欄や署名が必要な枠を見ただけでめまいが始まったようだ。


「おーい、嘘だろ…。俺が、こういう雑用が1番嫌いなの知ってるよな?オッサンが2倍仕事すりゃーいいじゃねぇか。」


「バカ言え。会合の準備と同時進行出来るわけねぇだろ。過労死するわ。」


眼光鋭くそう答えたイヴァンに、ロルフが愚痴を言う。


「こういう細かい作業はルタの方が向いてるだろ。」


「ダメだ。ルタはあくまで“軍医”だからな。戦略書や国境の整備の仕事は俺たちの分野だ。」


いかにもダルそうにソファに寝転ぶロルフは「あー、城のメイドでも1人呼んでくれたら頑張れるかもなー。」とぼやいている。


すると、はぁ、とため息をついたイヴァンが小さく呟いた。


「…仕方ない。“この手”だけは使いたくなかったが…」


「あ?」


ゆらり、とロルフの隣に立つイヴァン。

ソファから起き上がったロルフに、イヴァンはスーツの胸元から、数枚の紙を取り出した。

それらを一目見た瞬間、ロルフの目が見開かれた。


「そ、それは…!!」


「見覚えがあるようだな。この“コゲた楽譜”に。」


表情を崩さないイヴァンは、静かに語り出す。


「…ロルフ。お前は先週、“密かに買っていたイケナイグラビア写真集がノアに見つかりそうになり、証拠隠滅を図って魔法で燃やそうとしたが、火力が強すぎてルタの楽譜も巻き添えでバーニングする事件”を起こした。」


「ぐっ!(長いが正解!)」


顔がこわばるロルフに、イヴァンが続ける。


「…このことを知ったら、ルタは怒るだろうなー。」


「はっ!」


「…お前の仕事ぶりによっては、俺が新しい楽譜を買ってやらないこともないんだがなー。」


「うっ!」


ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべるイヴァンは、トドメの一言を発した。


「さ、どーする?資料を片付けるか、ルタに氷のナイフで殺されるか…どちらか好きな方を選ばせてやるよ。」

< 357 / 369 >

この作品をシェア

pagetop