大剣のエーテル
…ギィ……
扉の軋む音が辺りに響く。
はっ、として2人揃って顔を上げると、そこに、ゆらりと私達を見下ろすダーナさんが現れた。
「…話し声がすると思ったら…君だったのかい、ノア。」
「…!」
突然のことに言葉を失う。
いざ、ダーナさんを目の前にすると、少しでも希望があると思っていた前向きな気持ちが押しつぶされる。
(…怖い…っ…)
その時、ランバートがそっ、と私の手を握る指に力を込めた。
(…!)
彼は、相変わらずこちらを見ない。ただ、まっすぐ町長を見つめている。
彼の体温がゆっくりと伝わってきて、気持ちが落ち着いていく。
不思議なことに、私の口から伝えたかった言葉が自然と出た。
「ダーナさん。…お話ししたいことがあるんです。」
「………。」
私の言葉を聞いたダーナさんは、表情を微動だにせず数秒黙り込んだ。
そして、仮面のような笑みを見せて私に答えた。
「…雨が降ってきそうだな。立ち話もなんだ。さぁ、中へ入りなさい。お連れの方もご一緒に。」
いつも食料を受け取る時、たとえ雨が降ったとしても、それは玄関先でのやりとりだった。
家の中へ招かれた事など、一度もない。
「ノアちゃん、行こう。」
ランバートは、するり、と手を離して私から一歩下がった。
後ろから私を支えて守るように続く彼に、私は意を決してダーナさんの家に踏み込んだのです。