大剣のエーテル
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「出た…、“悪魔の子”だ…!またダーナさんがあの子に食べ物を恵んだのか?」
「町長さんも人が良いねぇ。いくら孤児だからって、魔力を持たない奴の世話を焼くなんて。」
冷たい風に乗って、ヒソヒソとした話し声が耳に届く。
町民の会話を、いちいち気にとめるのは無駄だ。
“悪魔の子”だと軽蔑の視線を向けられるのも慣れた。
(あぁ。誕生日くらいは、陰口を聞かずに家にこもって本の世界に浸りたい。)
今まで生きてきた中で見つけた唯一の趣味が、“読書”だった。
本を読んでいる間だけは、自分がこの世に生まれてきてはいけなかったことも、人々から忌み嫌われていることも、すべて忘れられた。
(早く帰ろう。今日は何を読もうかな。)
スタスタと足を速め、町の角を曲がった
次の瞬間だった。
「!」
私の目に飛び込んできたのは、大勢の人だかりとその中心に立つ1人の“大男”の姿。
私は、反射的に体を後退させ、素早く物陰に隠れる。
(一体、何の騒ぎ…?あの大男は町では見かけない顔だけど…)
ざわざわと落ち着かない様子の町民達に眉を寄せたその時。
中心に立つ大男が背中に背負っていた“大剣”をすらりと天に掲げ、大声で叫んだ。
「おい、よく聞け、町民ども!俺は、エーテルを束ねる団長だ!」