大剣のエーテル
第2章人斬りの町
*白衣の天使
カンカンカン!
柔らかい朝日を体に感じると共に、聞き慣れない金属音が鳴り響く。
「いつまで寝てんだ、ランバート!どうせまた夜中まで本を読んでいたんだろう!あれほどランプの火は大事に使えと………」
マシンガンのようなお説教にふと目を覚ますと、パンツスーツの上にクマさんエプロンという不可思議な格好をしたイヴァンさんと、外套にくるまって抵抗するランバートの姿が見えた。
シャツの袖をまくり、両手にフライパンとお玉を持つイヴァンさんは、それらで目覚まし時計よりも威力のある音を奏で、怒号を飛ばしている。
(“カンカン”聞こえる金属音はアレだったのね…?)
私がゆっくりと体を起こすと、それに気がついたイヴァンさんがくるりとこちらを向いた。
「あー…悪いな、ノア。毎回朝はこんな感じなんだ。初の野宿はどうだ?体は大丈夫か?」
彼の言葉にまだ半分寝ぼけながら「大丈夫、しっかり休めたよ。」と答えると、イヴァンさんは微かに優しげな表情を浮かべて「よし。」と頷いた。
現在。
次の町に向けて旅を始めた私たちは、私の住んでいた町を出た後、ひたすら森の中を進んでいる。
イヴァンさんの話では、今日の昼には隣町へと到着出来るらしい。
案外、まだ見ぬ世界は近くにあったのだと実感する。