大剣のエーテル
はっきりとした物言いに、人々は皆、ごくり、と息を呑んだ。
可憐な外見とは裏腹に、青年は氷のような態度を崩さない。
青年は、ランバートとイヴァンを視線で指しながら言葉を続けた。
「いくらエーテルとはいえ、この人たちの手元がいつ狂うか分からないんだから、騒ぎが起こったらじっとしてて。巻き込まれて死にたくなかったらね。」
青年の言葉に、辺りは再び静まり返った。
一喝し終えた青年は、ふいっ、と顔をそむけ、そのままランバートとともに男性を連れてその場を後にする。
私は、遠ざかっていく白衣を目で追いながらふと考えた。
(あの人はお医者さん…?ランバートとイヴァンさんの知り合いみたいだったけど…)
その時、四方にばらけていく町の人々の話し声が耳に届いた。
「さすがエーテルの団員なだけあって、迫力が違うよな、あの医者さんは。実力もあって、国中探しても右に出るものはいないと聞くぜ?」
「確か、史上最年少で医師の資格を取った天才だろ?見た目は“白衣の天使”とか言われてるけど…孤高で近寄りがたいよな。」
(エーテルの団員…?)
ぱっ、と隣を見上げると、イヴァンさんは私の言いたいことを察したように頷いた。
「あいつは噂通り、エーテルの団員の1人なんだ。まぁ、性格に少々問題はあるが悪い奴じゃない。とりあえず、俺たちも診療所に向かおう。」
「う、うん…!」
威勢良く返事をするが、心の中では小さな不安が渦巻く。
(なんだか怖そうな人だったけど…ちゃんと話せるかな…?)
白衣の彼の姿を思い浮かべると、ぴりり、と体に緊張がはしる。
私は、小さく呼吸をしてランバート達の後を追ったのだった。