大剣のエーテル
(何だと?)
彼の言葉は到底信じられないが、男性は嘘をついているようには見えない。
どうやら、男性は本当に人斬りの事件のことを知らないらしい。
(数時間前の記憶が脳から消えることも、傷が綺麗に塞がることもまずない。…だとすれば、なぜこの男は何も知らないんだ?)
男性に、嘘をつく動機も利点もない。
その時、ふと嫌な予感がした。
ざわざわと胸騒ぎがする。
(いっそのこと、発想を逆転させて…事件の時に斬られた男が、目の前のこの男性になりすました“別人”だったとしたら…)
最悪の事態が頭をよぎった。
おそらく、俺の頭の中に浮かんだことは、予感では終わらない。
「ランバート。どうやら、俺たちはうまく嵌められたらしい。」
「え…?」
俺は、素早く元来た道へ進路を変えると、ランバートに向かって叫んだ。
「一派の罠にかかったってことだ!診療所に戻るぞ!ノアたちが危ない…!」
と、次の瞬間。
遠くから、ドォン!という大きな音が耳に届いた。
《イヴァンside*終》