大剣のエーテル
*一派現る
ビリビリビリッ!!
診療所のベッドを仕切っていたカーテンが勢いよく破り切れる。
その場にいた全員が目を見開いた瞬間。
カーテンの向こうから現れたのは、真っ赤なマントを羽織った青年だった。
その腕には魔法陣の腕章が付いている。
先ほどまで会話をしていたはずの男性の姿がない。
(え…っ?!)
思わず目を疑った、その時。フードを目深に被った青年の顔がちらりと見えた。
前髪の間から覗いた瑠璃色の瞳が鈍く輝く。
その瞬間、魔力と共鳴するように彼の右手に光る指輪が熱を帯びた。
窓から差し込む光がベッドに映していた青年の影が、ゆらり、と揺れる。
はっ!としたその時。
ズゥ…!と影が天井に向かって伸び、まるで意志を持った人形のように蠢きだした。
(あれって…、ランバートが昼間戦ってた影…?!ということは…!)
嫌な予感が頭をよぎった瞬間、ルタさんが険しい顔で低く呟いた。
「フォーゼル…!」
すると、青年はわずかに目を見開き口を開く。
「さすが、エーテルだな。もう俺の名前まで調査済み、ってか。」
感情を隠した声が診療所に響いた。
緊張感が張り詰める中、ルタさんは低く答える。
「当然でしょ。一派の最年少幹部のあんたは、任務の標的の1人だからね。」
(一派の最年少幹部…?!この人が…?)
思わず目を見開いて青年を見上げると、フォーゼルと呼ばれた彼はフッと笑って口を開いた。
「素性が割れてるなら話が早い。お医者さん。悪いけど、一派の敵となる王の駒にはここで死んでもらう。お前らの仲間が騒ぎをかぎつけて来る前にな…!」