大剣のエーテル
フードから覗く瑠璃色の瞳が、ギラリと私たちをとらえた。
標的は、ルタさんだけではない。
この場にいる全員を仕留める気だ。
(に、逃げなきゃ…!)
ぞくりと体が震え、直感的に死の危険を感じた。
「う、うわぁぁぁっ!」
患者の1人が逃げ出そうとするが、フォーゼルの影が診療所の扉を固く閉ざす。
必死でドアノブを捻っても、ガチャガチャという音が響くだけだ。
まるで、そこは監獄。
禍々しい魔力が部屋いっぱいに広がり、影から生み出された人形達が焦点の合っていない瞳をぎょろり、と動かした。
声を上げることも、後ずさりをすることも出来ない。
と、次の瞬間だった。
ふっ!と頬に冷気を感じた。
撫でるような冷たい風に、はっとする。
「診察室で騒がないでくれる?ここは戦場じゃなく、俺のテリトリーだから。」
神経質で、険悪に尖った声がした。
顔を向けると、ルタさんの碧い瞳が苛立ちに満ちたように灯りを灯す。
魔力が湧き出るように放出され、今まで感じたことのない波動を肌に受けた。