大剣のエーテル
(これが、ルタさんの魔力…?)
診療所の空気が、まるで氷河に囲まれたかのようにひんやりとしていく。
するとその時、ルタさんは流れるような動作で、すっ、と腕を突き出した。
彼の手のひらの前に、瞳と同じ碧色の魔法陣が現れる。
そこから創り出されたのは氷の刃。
雪の結晶の形にかたどられた刃が一直線にフォーゼルの影へと飛び、心臓を容赦なく貫いていく。
狙いすまされた無駄のない攻撃は、一発も外れることなく敵を仕留める。
(す、すごい…!)
影が全て霧と化した時、フードから覗くフォーゼルの口元が、興味を惹かれたようにニヤリ、と弧を描いた。
「へぇ、お医者さんもちゃんと戦えるのか。…さすがエーテル。どうやら、甘く見すぎていたみたいだな。」
「戦闘員じゃない俺は一番殺すのが楽だと思った?…そういうの、すげー腹が立つんだけど。」
静かな闘志が碧い瞳に宿る。
フォーゼルを睨むルタさんは、さっきまでの医者の顔ではない。
その表情はまさに、エーテルの団員が見せる、獲物を目の前にした獣の鋭さに近い。
以前見た、ランバートやイヴァンさんの目つきと同じ威圧感を放っている。