大剣のエーテル

「こうなったら、仕方ないな。」


フォーゼルが、瑠璃色の瞳を鈍く輝かせた。

胸元から取り出されたのは、見覚えのある黒い石。


「幻夢石?!」


思わずそう声を上げた瞬間。

フォーゼルが魔法で生み出した影達に幻夢石のかけらをざあっ!と投げつけた。

ゴポゴポと人形に飲み込まれていくかけらは、影の体の奥でどくんと脈打つ。


嫌な胸騒ぎがしたその時。

制御が効かなくなった人形たちは、ガタガタと震えながら暴れ出した。


診療所の椅子や棚が次々と倒されていく。

我を忘れたような人形達は、止まることを知らない。


「きゃぁぁっ!」


フェリシアちゃんが瞳に涙を浮かべて叫んだ。

その顔は血の気が引き、真っ青で、恐怖で目を塞ぐことも出来ないようだ。

その場に居合わせた患者達も、身動きが取れずに混乱状態に陥っている。


「ノア!」


その時、ルタさんが緊張をはらんだ声で素早く私の名を呼んだ。

初めて名前で呼ばれたことに感動する余裕もなく、彼の指示に耳の神経を集中させる。


「落ち着いて、攻撃はしなくていい!患者達と一緒に俺の後ろに下がって、あんたは防御魔法で身を守って!」


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