ゆるふわ男子の族事情
「てめぇ……調子に乗ってんじゃねぇぞ!!!」
「調子に乗ってる?
それはどっちのことかなぁ?」
ナイフを片手にスピードをつけて向かってくる。
火事場の馬鹿力というのか……
かなりの強さで1発入れたはずなんだけどなぁ。
まだ動けるのか
「うるせぇぇぇえ!!!!」
「…………っ」
「……っ……えっ!?」
「夢乃くん!?」
避けることは出来た。
弾き飛ばすとも出来た。
でも、僕はそのどちらもしなかった。
「素手でつかむとか馬鹿なのかよ……っ!」
狼狽える相手。
傷つけるつもりはなかったのだろう。
大方、脅すことが出来ればいいと思っていたってところかな。
甘い。
ぽたぽたと滴り落ちる自分の血をどこか他人事のように見る。
「人を傷つける覚悟もないのに、そんなもの持ってたわけ?
あんた……甘いよ」