【短編】朝焼けホイップ
*********************
街中で彼と再会した。
「久しぶり、知帆ちゃん」
彼は、また少し切なそうな顔で笑った。
「久しぶり」
「幸せそうで良かった」
「あなたも。…ねえ、私あのときの言葉の意味がようやく分かったの」
彼が綺麗な女のひとを連れているのを以前に見かけたことがある。
良かった、と思う。
私は彼が好きだったのではなく、透流と似た彼の仕草が好きだったのだ。
ひどい女だった。
彼を通して、別の人を見るなんて。
「良いんだ」
「ちゃんとご飯、食べると良いよ。サイダーとコーヒーじゃなしに」
おどけて言うと、彼は優しくそうだね、と笑った。
「そうだ、ねえ紅茶はもう沢山買わない方が良いわよ。飲まないんだから」
冗談のつもりだったが、彼は思いの外へんな顔をした。
何だか見たことのないような顔だった。
笑顔なのに笑顔とは言いがたい、何というか。
「やっぱりか。おまえさ──」
「ちぃちゃんっ」
初めて、お前と言われて驚いていると透流が走ってきた。
目隠しをするように私を片腕で引き寄せる。
「遅れてごめんねえ。あれ、どちら様?」
「えっとこの人は…」
「ふーんまあいいや。行こう」
ろくすっぽ聞きもせずに透流は歩き出す。
このままじゃ目が見えないのに。
透流はどんな顔で私の元彼を見ているのだろう。
私は何だか複雑な気分で透流について歩いた。
街中で彼と再会した。
「久しぶり、知帆ちゃん」
彼は、また少し切なそうな顔で笑った。
「久しぶり」
「幸せそうで良かった」
「あなたも。…ねえ、私あのときの言葉の意味がようやく分かったの」
彼が綺麗な女のひとを連れているのを以前に見かけたことがある。
良かった、と思う。
私は彼が好きだったのではなく、透流と似た彼の仕草が好きだったのだ。
ひどい女だった。
彼を通して、別の人を見るなんて。
「良いんだ」
「ちゃんとご飯、食べると良いよ。サイダーとコーヒーじゃなしに」
おどけて言うと、彼は優しくそうだね、と笑った。
「そうだ、ねえ紅茶はもう沢山買わない方が良いわよ。飲まないんだから」
冗談のつもりだったが、彼は思いの外へんな顔をした。
何だか見たことのないような顔だった。
笑顔なのに笑顔とは言いがたい、何というか。
「やっぱりか。おまえさ──」
「ちぃちゃんっ」
初めて、お前と言われて驚いていると透流が走ってきた。
目隠しをするように私を片腕で引き寄せる。
「遅れてごめんねえ。あれ、どちら様?」
「えっとこの人は…」
「ふーんまあいいや。行こう」
ろくすっぽ聞きもせずに透流は歩き出す。
このままじゃ目が見えないのに。
透流はどんな顔で私の元彼を見ているのだろう。
私は何だか複雑な気分で透流について歩いた。