言えない恋
―――――
「あのさ…」
次は歩美の家
タクシーを降りようとした歩美は言った
「綾さんの話…芽衣は何も考えない方がいいかもね‥」
「…うん‥」
「壮介くんには綾さんに会ったこと言わないでおこうよ。その方がみんなのためじゃん‥?」
「……」
正直な話
今すごく迷ってる
綾さんの好きだった相手が壮介だったなんて…
綾さんの話してた全てが今になって私の胸を強く苦しめる
綾さんの気持ちを理解して聞いてたつもりだった
だけど所詮、綾さんじゃない私はその気持ちを完璧に感じてたわけじゃなかった
でもね
綾さんの愛した人
綾さんの幸せの場所
綾さんの最高の道
私が全て奪ってしまってたってことを知って
とてつもない絶望感に襲われた
「芽衣…?」
「分かってるよ。壮介には言わない」
「うん。あれは壮介くんと綾さんの問題であって、芽衣は何も考える必要はないの。逃げるようだけど、それでいいんだと思う。綾さんもさっき言ってたじゃん。旦那と上手くやっていく、って。それを応援するのが私たちの約束でしょ?壮介くんのことは…―」
「歩美」
「ん?」
「分かってるよ。大丈夫だから。何も考えてなんかないよ?私より歩美のほうが考え込んでんじゃん。心配しないで。」
「…そっか。ならいんだけど。じゃあまたね。今日はありがと」
「うん、またね」
タクシーは私の家へと向かった