短編集
friendship
「…なんなのよ」
「・・・」
「なんなの、その顔は」
「・・・」
「……本人に聞きなさいよ」
「だって聞いたって『人数合わせだって』としか言わないんだもん!!」
「そんなの知らないわよ!本人がそういうなら信用しなさいよ」
「紗夜ちゃん冷たい!」
携帯片手に涙目。
深夜1時に友達の紗夜ちゃんの家に押しかけて号泣。
迷惑極まりないことはわかってるんだけど今回は冷静でいられなかった。
「あのね、あたしだって明日仕事なのよ。あんたが来て号泣するから話聞いてあげてるの」
「聞いてあげてるって!」
「小さなことでしょうが」
「あたしにとっては小さくないもん!」
「浮気したわけじゃないんでしょ?一回くらい許してあげなさいよ」
言うだけ言って大きな欠伸をして、あたしを放置してベッドに入ってしまった。
部屋の電気まで消されて真っ暗な部屋に啜り泣く声。
毎回のことに紗夜ちゃんもこれ以上は構ってくれない。
確かに紗夜ちゃんが言うとおり、浮気されたわけでも怪しい何かを見つけたわけでもない。
事の発端は1時間前。
彼氏のコウちゃんに電話をしたとき後ろが騒がしいから飲みに行ってるのか聞くと「合コン」と言われ「人数合わせだから」とサラリと言われてしまった。
それが問題で、普通彼女がいる男が人数合わせといえども合コンに参加するか?ということ。
「紗夜ちゃん…」
紗夜ちゃんが布団に潜り込んでしまったら、どんなに声を掛けても放置され続けるのは今までの中で学習した。
だから何を言おうと紗夜ちゃんが返事をしてくれないのはわかってる。
でも、あたしが寂しくて紗夜ちゃんの布団に潜りこんで一緒に寝ようとするとあたしが入るスペースを空けてくれる。
背中しか見えないけど、本当はすごく優しい紗夜ちゃん。
もし紗夜ちゃんが男の人だったら絶対好きになってるって断言できる。
そんなことを言ったら「あたしはあんたが彼女なんて面倒くさくて絶対嫌」って言われそうだけど、そんなこと言いながらも世話を焼いて可愛がってくれるような気がする。
紗夜ちゃんの服を掴んで目を閉じる。
眠りに落ちる瞬間、背中が大きく動いて溜息が聞こえたような気がしたけど、もう睡魔には勝てなくて気が付いたときにはスーツを着た紗夜ちゃんの後ろ姿があった。