短編集

あたしの家と駅の方向は間逆。
道路へ出たら別れなきゃいけない。

だんだん涙ぐむあたしを見て紗夜ちゃんは昨晩から何度目になるかわからない溜息を吐いた。

「浮気じゃないって」
「へ?」

顔を上げると紗夜ちゃんが困ったような呆れたような表情であたしを見てた。

「浮気とか気分転換とかそういうことじゃないって言ってたから」

それだけ言って紗夜ちゃんはあたしに背を向けて、「気を付けてね」と歩き出してしまった。

放心するあたしを紗夜ちゃんは見てないけど、あの言い方はきっと連絡してくれたんだと思う。
あたしが言えないから、あたしがグズグズしてるから紗夜ちゃんが電話してくれたんだ。

紗夜ちゃんはどこまであたしを甘やかすつもりなんだろう。
どんな口調で電話してくれたのかはわからないけど、夜中に押しかけたあたしの為にコウちゃんに連絡を取ってくれたに違いない。

「紗夜ちゃん!!」

かなり先を歩いてる紗夜ちゃんを全力で追いかけて、颯爽と歩く紗夜ちゃんの背中に抱きつく。

「うわっ?!」と反動で倒れそうになるのをなんとか堪えた紗夜ちゃんは「危ないじゃないの!」と怒ったけど、「恥ずかしいから大声で名前叫ばないで」と笑った。

「紗夜ちゃん、大好き」
「知ってる」
「紗夜ちゃん、愛してる」
「知ってる」
「うわぁぁぁん!」
「やだ、子供みたいな泣き方しないでよ!」

あたしは一生紗夜ちゃんから離れられないと思う。

あたしはバカだから紗夜ちゃんみたいになれないけど、紗夜ちゃんが好きな気持ちだけは一生変わらないと思う。





END
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