短編集
One day
※他の作品とは少し雰囲気が変わりますので、ご了承下さい。
《よぉ、シン》
機械を通す声。
その向こう側でシーツが擦れる音がする。
「よぉじゃねぇよ。また女といんのか。勝手に休むな。俺が駆り出されるハメになんだぞ」
《あ~、わりぃ》
感情の篭っていない謝罪に溜息吐きながらも続けようと思ったらカチンとZippoの音と同時に女の声が聞こえた。
《ヒトシ?》
寝起きの甘ったるい声。
コイツもまたこのバカの餌食にされたのかと思ったら気の毒でしかない。
「今からこれんのか」
時刻は真夜中の2時。
今からでも店に来てくれた方が俺は助かる。
日が明けても休日なら寝れるが全うに生きてる俺は会社に行かなければならない。
《行くよ》
そう言って電話が切れた。
溜息吐いて携帯を直すとマスターが「どう?」と聞いてくる。
「今から来ます」
「じゃあ帰ってくれても大丈夫だ。ありがとう、シン」
マスターに挨拶をして店を出る。
明日も仕事だっていうのにあのバカのせいでまた寝不足だ。
タバコに火をつけて煙を吐き出す。
バーテンの仕事も嫌いじゃないけど昼夜逆転するのは疲れる。
慣れればそうでもないだろうけど夜しか活動しない女としか出会えないのは困る。
バカで遊び慣れてる女もいいが大人しくて私生活があまり見えないミステリアスな女の方が俺は興味がある。
バカの相手をしてる女とは正反対の女がいい。