貴方の残酷なほど優しい嘘に
翌日、起きてから鏡を見て目が腫れていない事にほっとした。彼氏・・・元彼と住んで居た所より実家の方が会社に近い、ゆっくりと支度をしていると携帯電話が鳴り、ディスプレイを見ると表示されていたのは知らない番号だった。

「もしもし」

と、出ると低い声で「もしもし」と返って来た。誠君の声だった。

「朝早くにすみません、今、大丈夫ですか?」

なんで番号知ってるの?と聞こうとして、彼が自分の番号を知り得る唯一の方法に思い当たり別の言葉を返す。

「大丈夫だよ。どうしたの?」

「あ、すみません、女の子の電話番号を人に聞くのはどうかと思ったんですが、どうしても連絡を取りたくて」

まったく、どんな人生を歩めばこんな16歳が出来上がるのだろうか。実は35歳でした、と言われた方がまだ納得出来る気がした。

「いいよ。知らない人じゃないんだし」

「ありがとうございます。それで、その、どうなりましたか?」

「何が?」

つい、意地悪をして見たくなった。自分の方が子供っぽいなと思い直し、すぐに言葉を繋ぐ。

「ごめん、冗談よ。大丈夫、昨日の夜連絡あって、綺麗さっぱり別れたよ」

綺麗さっぱり、とゆう表現が適しているかは微妙だが、結末としては変わらないからいいだろう。これ以上誠君に不要な気を遣わせるのも心苦しい。

「そうですか・・・」

心なしか、声のトーンが下がった気がした。

「誠君、確かに送信ボタンを押したのは君だけど、あのメールを作ったのは私で、私は真剣に考えて考えて作ったの。だから、送信ボタンを押したのが誰であろうと、あのメールは私の意思なの、誠君が気にする事なんて一つもないんだよ?」

「でも・・・」

誠君の納得し兼ねる様な声に少しだけ苛立った。だから、ちょっとだけ驚かせるつもりで言った。本当にそれだけだった。冗談のつもりだった、でも、それは私の頭だけで心は違ったらしい。

「じゃあ、責任取って」

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