瑠璃の雫
カタン
台所の前置かれた木の机
席に着く
私の席の前は兄の席
「瑠佳…」
彼の姿は見えない
窓には強い雫が打たれ始めた
冷たい雫だ
とんとんとん
彼の部屋に続く階段を登る
「瑠佳……」
そこにも彼の姿は見えない
整えられた白と黒の部屋整えられたベット
ガチャ
お風呂。
木の匂いが鼻孔をくすぐった
「瑠佳………」
ここにも彼の姿は見えない
彼がいつもいた本棚に囲まれた場所
いつも彼が使っていたクッションは彼の形を残したままそこにあった
「瑠佳…………」
どこにも彼の姿は見えなかった。
ドタン
畳と膝が擦れた
艾に雫がいくつも落ちる
ガタン
あの日のように扉が開いた
「璃香……………」
私が瑠佳を読んだような声で翡翠は私を呼んだ
「翡翠。」
焦ったような顔でこちらを見ていた彼に思わず笑ってしまった
あははあははは
笑い声が静かに響いた
涙は止まった
自室へとつながる隠し階段を登った
吹き抜けへつながる窓を覗いた
翡翠が上を見上げていた
ここは私の場所
私だけの場所
8枚の畳
1枚の布団
隣は瑠佳の部屋
でも部屋は繋がっていない
ー瑠佳はもういない
ー私は1人だ
もう一度下を見た
うんん
ー1人じゃない
ー私は生きていける
大きな窓から太陽の光が差し込んだ
久しぶりに
それは私の心を明るく照らした